第1章 夜暁
「おやすみ、花。少し寝てな」
やっと頭が朝日を認識した頃。
彼はおでこにそっと口づけを落とすと。
ジャケットに袖を通して、そのまま玄関を出ていった。
私は。
重くなる瞼に逆らえずに。
そのまま引き込まれるように、目を閉じたんだ。
…………………………
……………………………
「おはよう、花」
「おはよ」
まだまだだるおもい体を無理矢理起こして。
働かない頭で真横を見れば。
「ずいぶんと昨日はお盛んだったようで」
大学時代からの腐れ縁、の、彼女、藤崎 澪(ふじさきみお)がにやにやしながらこちらを見つめていた。
「会ってません」
バタン、と勢いよく更衣室のロッカーを閉めると。
「キスマークついてるよ」
間髪いれずに漏れでた言葉。
反射的に両手を首もとに持ってった。
「……………」
頭が指令を出す前に、勝手に体が動く。
つまり、条件反射だ。
条件反射は条件反射で、勝手に体が動くんだから仕方ない。
冷静な思考回路が戻るまでに1秒未満。
だけど。
彼女を楽しませるには十分な時間だ。