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依存愛-彼と過ごした3000日-

第8章 甘い蜜の、対価、代償


「くだらないこと話してごめん」
「花」
「新婚旅行、楽しんで来て?」
「………うん」



態度を一変させた私に、不審な顔を見せる澪には気付かないふりして。


笑顔を作る。


『結城の話はしないで』


澪が言ったんだよ?


だからもー、しない。


わかってもらうつもりもない。


「花、あのさ」
「澪」
「……」
「わかってる」



気まずい、沈黙。


空になったグラスの、氷水になって薄まったアイスティーを一気にストローで吸い込んだ。
途端に聞こえた、機械音。


「………鳴ってる」
「うん」
「出ていいよ、旦那様でしょ?」
「いい」
「澪」

「花、ごめん、あのさ」

「うん」


何か言いたげな澪の言葉を聞きたくなくて。

「楽しんできてね、澪」


「…………………うん」


笑顔で先手を打った。




『バイバイ』、って。
澪の後ろ姿を窓越しに見送ると。

笑顔で電話をかける澪が、人混みに消えてくのが見えた。


澪は。


きれいすぎて、時々自分が霞んで見える。


大好きな人に愛されて。
大好きな人の子供を授かって。


まっすぐに、一途にずっとひとりだけを愛し続けられる、喜びを知ってる。

私には、知らない想いを、感情を、喜びを知ってる。

きれいなままの恋愛の色を、たくさん知ってるんだ。



私の世界は、色付くことさえしてくれない。


しーちゃんとさよならしたあの日から、私の世界は色を無くしたみたいに。

モノクロでしか私の視界にうつってこない。






自分勝手。
わがまま。
欲張り。



わかってる。



甘えてるだけ。



大丈夫。
甘い蜜を吸い続けた代償は、ちゃんと払うよ。









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