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依存愛-彼と過ごした3000日-

第5章 対峙


「飲む?」



正面に向き直って、首を傾げると。



「お酒。それ、お酒だよ?」
「きみ、何歳?」
「お酒飲めるの?」



次々にそう声をかけられた。



お酒。



手の中のグラスに視線を落とす。
上から見ると、シュワシャワがキラキラしてて海の中みたい。


「うん、のめる」



一番下が青くて、真ん中が白くて。
上が透明。
すっごく、きれい。
にっこりと笑ってそう言うと。




「花、あんまり笑顔振り撒かないで。みんな勘違いする」



後ろから伸びてきた手に、きれいなドリンクの入ったグラスを奪われた。


「ゆうちゃん」



顔だけ後ろにまわして下から見上げたゆうちゃんは、一瞬ビックリしたように固まって。
花から取り上げたグラスを、一気に飲み干した。



「あ、それはなのー」



「帰るよ、花」



花飲みたかったのに。



「せっかく頼んでくれたのにごめんなさい」
「また頼む?」
「いいの?」




「よくない」




頭をがしっと上から押さえられて。



「帰るよ」



怒ったように言うゆうちゃんに、頷いた。



頭、痛い。
力加減、間違ってない?



「綾瀬さん、花の靴」



腕を引っ張られてゆうちゃんについていくと。
後ろから、今度は澪の声。
抱きつきたい衝動を必死に押さえて。



「やだ、それ痛い」



澪が持ってきた靴を屈んで履かせようとするゆうに、首をふる。




「花、おいで」


「花!」って怒る澪を笑顔で制して、ゆうは花に背中を向けて屈んでみせた。


「いいの?」
「いいよ」


にっこり笑って、背中にぎゅーって抱きついた。



「綾瀬さん、甘やかさない方がいいですよ」
「飲ませたの、俺だから」





温かい。
おっきい、背中。
ゆらゆら。
ゆらゆら。
気持ちいい。


「花?」



澪の声が、遠い。
まぶたが、重い。
暖かくて、おっきい、背中。
安心する。




「……………しー、ちゃん」






気持ちいい。
気持ちよすぎて、目があかない。



ゆらゆら。



ゆらゆら。



あったかいこの背中は、誰の?






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