第5章 対峙
「お花、ありがとう」
披露宴の間にも、主役のふたりはずっと忙しそうで。
やっと澪と話すことが出来たのは、お色直し後のキャンドルサービスが終わったあとだった。
「お料理美味しいよ?食べられてる?」
「うん、食べてるよ。ありがとう」
お色直し後の澪は、水色のマーメイドラインのドレス。
人魚を思わせるドレスに合わせて、ネックレスとピアスは貝殻。
頭にはティアラ。
まるで人魚姫みたい。
「すごいね、妊婦とは全然思えないよ、澪」
「まだお腹、そんなに目立ってないからね」
元々、細くて身長もある澪だからこそのドレスだね。
「次は花の番だからね!」
「え?」
「ブーケ。受け取ったら次に結婚しなきゃだめなんだよ」
「それ、しーちゃんも同じこと言ってた」
「結城?」
「あ」
しーちゃんの名前出したとたん、眉間にシワ。
「なんて言ってた?」
花嫁がする顔じゃないよ、澪。
「………………宣戦布告?」
「ふぅん」
あ、やっと笑った。
「ちゃんと伝わったなら、よかった」
「なんのこと?しーちゃんは澪に聞けって」
「教えなーい」
「えー?」
「花、写真とろ?」
「とるとる!」
大好きな澪の結婚式。
澪の隣で笑ってられて、嬉しい。
せっかく澪がくれた花束は、真っ白すぎて私には眩しすぎる。
幸せそうに笑ってる澪の隣に。
いる資格も、権利も。
たぶんもう、私にはないよ。
ごめんね。
澪。
だけど今は、なんにも気付かないフリして大好きな澪の隣にいてもいい?
隣で、笑っていてもいい?
私の心も体も、このドレスのように真っ黒に染まってるから。
真っ黒に染まったドレスは、真っ白には戻れないんだよ。
澪のようになりたかった。
澪は、花のあこがれ。
澪。
大好きな澪。
せっかくくれたキレイなブーケ。
私に受けとる資格なんてないよ。
私たぶん、結婚出来ない。
結婚したい人は、もう。
違う誰かのもの、だから━━━━。