第2章 朔
ベランダから空を見上げて見れば。
真っ暗な闇夜に浮かぶのは少しばかりの星たち。
「…………願い事、叶うかな」
月が見えない。
つまり、新月だ。
新月、『朔』ってゆーんだって。
はじまり、の意味。
昔の人は月の満ち欠けを暦がわりにしてた、とか。
新月には力があって、願い事を言うと叶うんだって。
昔、最愛の人が言っていた。
「……………しーちゃんに、会いたいよ」
もし叶うなら。
また、あのぬくもりに触れたい。
あの声を聞きたい。
彼の腕に、抱かれたい。
叶うなら。
お願い。
彼を、私に下さい。