【コナン・まじ快】薔薇を食べる【工藤新一・黒羽快斗】
第5章 6月
【再会】
彼に別れを告げたのは自分だった。
3年生に上がったあとすぐ、ちょうど今くらいの時期だろう。半年も学校を休学していた彼を待っていたというのに別れはなんだか呆気なくて気まづくてクラスが離れたことを良いことに私は彼を避けていた。
彼は、日本警察の救世主とも呼ばれる凄い名探偵で凄くかっこよくて、頭が良い。私はこのまま彼の隣でいることが怖くなった。待つのが辛く、寂しくなった。でも、探偵の彼を否定は出来なくて恋人という関係から幼馴染に戻ったのだ。
「まーだ、連絡もしてないわけ?」
園子が目の前で苦笑いを浮かべる親友…蘭を睨む。昼時をすぎた喫茶ポアロは客も少なく静かで、蘭と園子以外はこの店の看板店員のファンである女子高生4人組しかいない。
「うん…だって、卒業してからは全然会ってなかったし。たまたま会った時も気まづくてすぐバイバイしちゃってたし」
「まだ新一くんの事好きなんでしょ?彼、顔だけは良いからすぐ取られちゃうわよ。いいの?それで」
「…新一が私の事をまだ好きな訳ないよ」
「蘭…」
すると、カランカランとドアベルが鳴って蘭の視線はそちらに向く。そして、ハッと目を見開いた。
「いらっしゃいま…あ、桃さん!お久しぶりです」
「こんにちは、安室さん」
イケメン店員安室とにこやかに挨拶を交わす女性に蘭と園子、女子高生達までも目を奪われた。女性は、カウンター席に通されるとアイスティーを注文し椅子に座った。
「わ、わぁ!物凄い美人じゃないの…芸能人?」
「さぁ?安室さんと顔見知りみたいだし、常連さんとか?」
「恋人だったりして」
「えぇ!?でも…お似合いだね」
オレンジのウエストがしまったプルオーバーに花柄のロングスカート、赤い厚底のサンダルを着こなし色落ちしている青いボブヘア、耳にはパールのピアスが輝いている。左手の薬指にはシンプルな指輪まであり安室の恋人という可能性はなくなった。