【コナン・まじ快】薔薇を食べる【工藤新一・黒羽快斗】
第4章 5月
私の容姿に頬を赤く染めて、笑顔を向ける男…私の容姿を褒めて近付いてくる男にろくな男はいない。それは、中学生くらいから私の中で分かった事。美しい母と若きイケメン教授と呼ばれた父の間に生まれた自分は人より容姿が整っている事は知っていた。
この顔は最大の武器だ。私が見つめて、微笑むだけで大抵の男は落ちる。それ故に異性に対してだんだんと冷めていく。男を口説くなんて簡単な事、相手の事を調べて相手が望む格好、望む言葉、望む行動を取って溺れさせればいいだけ。
キスもセックスも愛する人とだけなんて綺麗事は今更言わない。私のこの行動はすべて愛する新ちゃんの為、私の名探偵に勝利を納める為の行為。愛するあなたの為なら私はなんだってやってみせる。新ちゃんと快斗の為に生きる、これ以上美しい生き方があるだろうか。
「桃ちゃん、綺麗だよ」
「嬉しい…」
1つ大変な点があるとすれば、私は2人以外に触れられても全く感じはしないからフリをするのが大変。快斗の手だったら触れられた所が熱を持って蕩けてしまうのに…新ちゃんの唇だったら恋も知らぬ初心な乙女になれるのに。
「ねぇ、輝明さん…悲しいことでもあった?」
「え?」
「なんだか、寂しそうだから」
さぁ、仕上げにかかろう。動きを止めた彼の首に腕を回して、目を細めると案の定ゴクリと喉仏が動く。
「教えてあなたが抱えてるもの」
「…君は俺が犯罪者だとしても嫌いにならないかい?」
「もちろん」
「実はね、俺はある組織の人間で昨日も違法薬の取引に…っ!?」
鳩尾を殴られ、息が詰まったような声を上げて加賀美は、私に寄りかかる。気を失った事を確認して離れると枕の下に隠していたボイスレコーダーのスイッチを切った。
「あなた馬鹿ね、出会ったばかりの女にそんな事を話すなんて」
ここのホテルは廊下に監視カメラもない。私1人で出ていってもなんの問題もない。手も指紋が残らないように細工はしてある。それに、あの人にお願いもしてあるから大丈夫だろう。手早く加賀美のスマホから私に関するすべての情報を消し、データのコピーをすると早々に部屋を出ていく。
「素敵なデータをありがとう輝明さん。でも私、馬鹿な男は嫌いなの」
ニコリと笑ってエレベーターの扉がしまった。