【コナン・まじ快】薔薇を食べる【工藤新一・黒羽快斗】
第1章 プロローグ
『今、目標が会場に入った』
「りょーかい」
新一から入った連絡に快斗が返事をして、パソコンのキーボードを叩く。
ラインズホテルのスイートルームで夜景を楽しむでもなくカーテンを締め切り、テーブルにはパソコンやスマホ、紙とペンが置いてある。
「目当ての人…来たの?」
「ん、みたいだ。そろそろ行けるか?」
「えぇ、準備万端」
快斗の座る椅子の背に手を置き、女は妖艶に微笑む。膝丈の黒いドレス、首元と七分丈な袖は黒のレースで耳と首にはパールのピアスとネックレス。ウィッグを被り、アップスタイルで手にはパーティーバッグ。左手の薬指から指輪を抜くと、彼女は快斗に差し出した。
「すぐ、終わらせて戻るね」
「待ってる」
チュッというリップ音が響く。唇を離すと女は、表情に色を乗せてスイートルームを出ていった。
快斗は、フッと笑ったあとパソコンの画面を見つめて頬杖をつく。
「今、桃が向かった」
『了解』
パソコンの画面をホテル内の監視カメラに切り替え、快斗はカメラに映る映像をカップに入ったココアを飲みながら眺めていた。が、横の書類に目を向けて改めて内容を見る。
「神澤幸太郎…神澤芸能事務所社長、54歳。独身……好みの女は……」
監視カメラに桃が映り、パーティー会場へと入っていく。それを見て、快斗はニヤリと笑って書類から目を離した。
「黒が似合う若い女………」