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忠心 -甲鉄城のカバネリ-

第2章 奥山


激しい音を立てて、駿城の車輪が回っている。
皆、それぞれに複雑な表情を浮かべていた。

先日から、走行予定が狂いに狂っている。

使う予定だった線路がカバネに破壊されて、使えなくなっていたことがすべての発端だ。
迂回を強いられ、かなりの遠回りになった。

まっすぐ東に向かって走るつもりが、一度北を経由して東に向かわなければならなくなったのだ。

北を経由する…そのことは大きな懸念事項だった。
北側の国のほとんどがカバネに襲われて苦しい生活を送っている。
そのようなことを聞いたことがあったからだ。

そして実際に北国の駅を回ってきたが、想像以上の有様であった。
行く先々の駅はほぼ壊滅状態で、物資も何もない。
むしろ、こちらが食事や布を懇願されてしまう始末だ。

なけなしの物資を交換し合い、なんとか駿城を走らせている。
そんな状態の中、もう見慣れてしまった廃駅を通り過ぎようとしたその時に、大量のカバネに襲われた。

生駒と無名すらひるむ量のカバネだった。

数など数えきれないことはもちろん、いつ融合群体になってしまうのかわからない。
扉を破られかけ、車輪にカバネが挟まり脱輪の危機にすら晒された。
今までの旅路で最も、と言っていいほどの激戦だった。
俺も死を覚悟した。

本来はその駅の中で進行方向を変えたかったのが、そんな余裕もない。とにかく逃げるように、その廃駅を最短距離で突破した。

そのまま東に向かってしまおうとしたが、取れかけた扉や傷ついた車輪でこのまま北を突破してくのはあまりにも危険すぎる。

何時間にも及ぶ話し合いのあと…
再び大きく経路を変更し、俺たちは極北にある駅へ向かうこととなった。



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