第6章 声
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女性「───そうですかー、それで東京に」
夏海「ええ、まぁ...お恥ずかしい話ですけど...」
女性「そんな!いいじゃないですか夢追いかけるって!それに私も上京してきたときは正直迷いましたよ」
夏海「やっぱ広すぎるんですよ東京...」
私たちは今小さなカフェにいる。こんな大きい荷物持って来るようなところじゃないけど。
彼女はとても人懐っこいというか、フレンドリーというか...すぐに打ち解けることが出来た。
彼女の名前は川口杏花(かわぐち きょうか)。上京して6年目だという。今は一人でマンションに住んでいるらしいのだが...
川口「実は私、大久保さんがこれから住むマンションの5階の部屋借りてるんです」
夏海「───はい?」
川口「同じマンション」
夏海「このマンションの5階?」
川口「はい。」
夏海「───え!ちょっ、え!?同じマンション!?」
まさかこんな出会いがあるなんて...神様ありがとうございます...
川口「いやぁ私もびっくりしちゃいましたよ!大久保さんが持っているメモ見たら自分のマンションの住所書いてあるんですもん!」
そりゃ驚くわ。なんとなく声をかけた人が自分の住んでいる住所が書かれているメモ持ってたら確かに驚くわ。
そんで、何でカフェに誘ってくれたって...
川口「マンションまでご案内しようと思ったんですけど、私今日は仕事休みで1人ショッピングの予定だったし、暇だから...ご一緒にお茶でもーって思って」
なんて適当な方なんでしょう。もしかしたら天然...そうなの?そうですよね?
でも、おかげで変に緊張してたのが楽になった気がする。