第3章 別れ
───今日は卒業式。
式は何事もなく無事に終わり、私は今駅に来ている。
寺島「わざわざお見送りなんてよかったのにー」
夏海「で、でもっ...」
寺島「はいはい、夏海ちゃんはこういうところ、言ってもきかないからね」
寺島さんは笑って私の頭にポンと手を置いた。
思えば私が変われたのは寺島さんが演劇部に誘ってくれたから。
夏海「あの、本当にありがとうございました」
寺島「お礼を言うのはこっちの方だよ、俺は夏海ちゃんのおかげで今こうして自信を持って東京に行こうとしてる。」
夏海「そんなっ...私を救ってくれたのは寺島さんです。──私、すぐに追いかけます!」
寺島「うん、すぐに追いついておいで。次会うのはお互い声優になってから、になるのかな。」
夏海「はい...絶対になります!寺島さんは私にとって憧れの先輩です!」
寺島「先輩、か...」
寺島さんは少し悲しそうに微笑んだ。
寺島「夏海ちゃんの為にも、全力で頑張らなくちゃね!夏海ちゃんも頑張って。」
夏海「はい!」
時間はあっという間にすぎてしまう。寺島さんが乗る新幹線が目の前に停車した。
寺島「じゃ..またね。」
夏海「...はい。」
寺島「そんな泣きそうな顔しないで。また絶対会うんでしょ?...ずっと待ってるよ。」
夏海「..はい!私、応援してますから!!」
寺島「俺も。応援してるよ。2人で声優になるんだもんね。」
夏海「はい!」
寺島さんは素敵な笑顔を見せると、新幹線に乗り込んだ。
寺島「俺、待ってるから!また会えるの!」
夏海「はい!!」
私は思いっきり笑顔で言った。その笑顔は泣くのを我慢するためではない。至って自然とその笑顔がこぼれたのだ。
新幹線のドアが閉まった。もう声は届かない。それでも寺島さんはこちらに笑顔で大きく手を振ってくれた。私も手を振ってそれに答えた。
───私も絶対に声優になってみせます。
寺島さん、声優になってください。寺島さんなら絶対になれる、素敵な声優になれる。
───私も貴方のようになりたい。
絶対に2人で声優になる。その誓いを胸に、私は新たな道を歩き始めるのだった。