第2章 声優
寺島「──えっ、もうこんな時間?話してると時間が経つのも早く感じちゃうねー。」
話し込んでいるうちに時間はかなり経ったらしく、窓の外はもう真っ暗だった。
寺島「夏海ちゃんの親も心配するし、名残惜しいけど帰ろうか。家まで送ってくよ。家もそんなに遠くないし、女の子を1人で帰らせるわけにはいかないからね。」
夏海「あっ、ありがとうございます...」
そんな真っ直ぐ『女の子』って言われると、照れるな...
◆
寺島さんは私を家まで送ってくれた。帰り道でも寺島さんはたくさんのことを話してくれて。私たちの歩幅はとても狭く、ゆっくりだった。
寺島「もっと話していたいけど──今日はもうおしまい、かな。なんかごめんね、こんな時間まで付き合わせちゃって。」
夏海「いえ、むしろ感謝してます。寺島さんのおかげで少し分かった気がしたんです、自分がどんな道を進みたいのか。」
寺島「そうか。俺の先輩のようにはいかなかったかもしれないけど、夏海ちゃんの役に立ててよかったよ。───じゃあ、またね!」
寺島さんはいつもの笑顔で私に手を振った。
夏海「はい、ありがとうございました!」
今日はよかったな、寺島さんの話たくさん聞けて。私はこの先どうするつもりだったんだろう、何に悩んでいたんだろう...そんなことも忘れてしまった。
今日のことは多分一生忘れないんだろうな。いや、忘れちゃいけない。寺島さんが先輩からそうしてもらったように、私も寺島さんからたくさんもらった。寺島さんのおかげで私はこの先も進めるんだろうな。
夏海「──ありがとうございました」
もう既に遠くに行って見えなくなった寺島さんにもう一度お礼を言って、私は家の中に入った。