第2章 声優
寺島「丁度今ぐらいの時期だったかな、あの時も..。今みたいに、2人で喫茶店でお茶しながら話したんだ。そしたら、先輩が『拓篤はこの先やりたいことないのか』って。」
夏海「......」
優しい表情、優しい声で話してくれる寺島さんの話を、私は静かに聞いていた。
寺島「俺、先のことなんて全然考えてなかったからさ。そのことを言ったら『声優なんてどうだ』って、『好きなアニメの制作に携われるじゃないか』って、俺に助言をくれたんだ。正直、その時話していなかったら今でも進路に悩まされていたかもしれない。その先輩のおかげで、俺は今声優を目指せているんだ。───ほんと、優しい先輩だよね。」
夏海「──その先輩はきっと、寺島さんのことをよく知っているんでしょうね。」
寺島「え...。───そうか。そうだね。」
寺島さんはとても柔らかい微笑みを浮かべていた。
いいな、目指すものがしっかりあって、それに対してこんなに真剣で...。
───私も、こんな人になりたい。