第2章 あなたの右側【エルヴィン】
神様、懺悔します。
私はこの時、心の中でこんなことを思っていました。
もしもエルヴィンが去り逝くときが来たら、一緒に逝きたい。
エルヴィンが夢を絶たれるのならば、私も彼と運命を共にしたい、と……。
強い女性ならば、こんな愚劣なことを思いはしないでしょう。
恋人が叶えられなかった夢を代わりに叶えようとするのが真の愛情なのかもしれない。
しかし私は、愚かで脆弱な女なのです。
エルヴィンと二人で叶える夢でなければ意味がない。
ずっとエルヴィンと生きてきたのだから、エルヴィンと逝きたい。
エルヴィンの隣には、いつも私がいた。
一人で逝かせたくはありません。
彼の右側には、私がいなくては…。
決して口にはしません。
もしエルヴィンが先立っても、本当に後を追うなんて馬鹿な真似もしません。
私のこの想いを知ったら、きっとエルヴィンは悲しむから…
明日出立する時には、立派な兵士としてエルヴィンの右隣にいたいから…
こんなにも脆い私の胸の内を、神様だけには聞いて欲しかったのです。
これは、エルヴィンには秘密の話。
【 end 】