第3章 day2 「入間銃兎」
「今日の指名はイルマさんな?」
そう店長に言われたがイルマさんに記憶がない。
イルマ、イルマ、イルマ。
考え込んでいれば店長が情報をくれる。
あ、かなり前に呼んでくださったインテリ風眼鏡のお兄さんか。
前回はホテルに直接呼んでくれたはず。
「20時、ホテルに直接向かうから準備しておけよ。」
「了解でーす。」
「あ、オプションノーパン、できるか?あと変えの着替え持っていけよ。」
「わかりました。」
イルマ…もとい入間さん。
メガネでスーツの人だったはずだから洋服も下着も大人っぽいのがいいな。
ロッカーを開くと私は淡いピンクのレースのタイトスカートと黒のリボンタイのシフォンシャツ、黒の総レースの下着…もといブラをチョイスした。
シャワールームで化粧を落とし、洋服を身につけると、メイクボックスと共に空いた席に座った。
「んー?ゆいなチャンいつものメイクじゃないのー?」
「お疲れ様ですあやせさん。たまにはメイク変えてみようかなって。前あやせさんに頂いた赤のリップも試したいので。」
「そっかー。」
ここの人気ナンバーワンのあやせさん。
可愛らしいお顔の割に、NGプレイはほとんどなしの猛者。
彼女の愚痴を聞きながら、カラーコンタクトを付け、髪をまとめメイクを仕上げる。
チークはいつもより赤みを帯びたもの。
強めのアイライン。
アイシャドウは淡いブラウンをほんのり。
アイブロウは細めにくっきりめ。
そして最後に頂き物の赤のルージュを引くと、話の途切れるタイミングを見計らってメイクボックスを閉じた。
「そろそろ予約の時間なので。」
ぺこりと頭を下げロッカーに戻る。
仕事の道具と一通りの着替えを準備し黒のピンヒールを掴むと、私は店長に声をかけ待機するドライバーさんのところに向かったのだった。