第5章 高熱※
サウザンド・サニー号は、冬島の海域に入った。
急激な気温の変化と、溜まっていた疲れに身体が耐えきれなかったのだろう。
私は、熱を出してしまったようだ。身体の節々がズキズキと痛み、着込んでいるのに、背中がゾクゾクして歯ぎしりをする程に寒気がする。立っているのがやっとな程だ。
「……はぁ……はぁ……」
チョッパーのところにいけば、確実に騒ぎになる。サンジを心配させたくない。だから、私はタング号のローのところに行くことにした。ローなら穏便に治療してくれるはずだ。
フラフラとした足取りで、隣の船へと渡る梯子を歩いていこうとしていた時だった。
熱で視界が歪んでいたせいか、私は足を踏み外した。
(……あ…海に落ちる…)
落ちれば、今の私は確実に溺れる。元気なら落ちても問題なく泳げるが、今はどうしようもない。海面へ真っ逆さまに向かう…
皆、気づいてないだろうな…と目を閉じ死を覚悟した瞬間だった。
「……ROOM!シャンブルズ!」
気づけば、私はローの腕の中だった。
「足を踏み外すとは、お前らしくないなと思ったら…なんだこの熱は…!」
ローはそのまま私を横抱きに、診察室へと駆け込んだ。
「……サンジ…はぁっ…はぁっ……サンジ……」
私は意識が朦朧としていたようで、うわ言で何度もサンジの名前を呼んでいた。
「残念ながら、ここにいるのはサンジじゃねェ。今、解熱剤投与するから待ってろ。」
返事をすることなく、私は意識を手放した。
どのくらい経ったのか。目を覚ますと、サンジがベッドの脇で私の手を握ったまま、眠っていた。
私はサンジを起こしたくなくて、そっと握られている手を離そうと動いた途端。
「レイラ…目が覚めたか。熱に気づいてやれなくてごめん…」
サンジの声が心做しか震えていた。
「……サンジ…」
「なんでチョッパーのとこに行かなかった?」
「サンジに心配かけたくなくて。ごめんなさい。」
そんな話をしていた時、ローが診察室の扉をノックした。
「入るぞ。」
ローは診察室に入るなり、黙って私の側に寄ってきて、手首を取り、脈を測り始めた。
「…トラ男くん…」
「黒足屋の名前をうわ言であんなに呼んでいて、知らせないわけにいかねェだろ。」
「レイラの姿が見えなくて、探してたところにローが知らせてくれたんだ。」