第23章 入学準備
帰り道になっても、ニノはまだ頬を膨らませたままだった。
自分の希望が何一つ通らなかったことにまだ拗ねてるんだ。
「新しい制服、ニノとお揃いで嬉しいなー」
少しでもニノの気分が上がればと思って声を掛けてみる。
「制服だからみんな一緒で当たり前だもん」
でもツンとそっぽを向いたニノに間髪入れずに言い返されて、思わず雅紀と顔を見合せて苦笑してしまった。
まぁ、そうだよね。
制服だからみんな一緒だよね。
ニノの言うことは、もう本当にその通りだ。
その通りなんだけど。
でも違うんだよ。
「俺はニノと雅紀とまた同じ制服が着れるのが本当に嬉しいと思ってるんだよ」
また3年間同じ場所で同じ時間を一緒に過ごせるってことだから。
それが本当に嬉しいんだ。
その思いはニノにもちゃんと伝わったみたいで。
ニノは俺をじっと見つめるとむくれるのをやめて。
「………俺も」
小さな声でそう呟くと、恥ずかしくなったのか耳を赤く染めながら照れ隠しみたいにえへへと笑った。
その笑顔がとってもとっても可愛くて。
すごく幸せな気持ちになった。
その後「俺も俺もー!」と声を張り上げた雅紀にニノがうるさいと怒ってまた口喧嘩が始まったけど。
そのやり取りもなんだか幸せに思えて。
もう外だし黙って眺めておくことにした。
この先、どんな高校生活が待っているのかはまだ全然想像もつかない。
でもニノと雅紀とこんな風に笑って過ごせるなら、楽しい日々になるに決まってる。
新生活も楽しみだ!