第20章 卒業式
「でも、まっすぐカズに想いを伝える丸山を見てたら、告白する勇気もないくせにコソコソ盗み聞きしてる自分がものすごく情けなくなって…早々に立ち去ろうとしてたんだよ。でもすぐにカズの悲鳴が聞こえてきて…」
それで慌てて駆け戻ってきてくれたらしい。
「カズを助けられたから結果的には良かったんだけど…ごめん、後をつけて告白を立ち聞きしてたなんて気持ち悪いよね…」
項垂れた翔ちゃんはまるで断罪されるのを待ってるみたい。
確かに衝撃的な告白だった。
颯爽と助けに来てくれた翔ちゃんは、俺にはキラキラした王子さまに見えてたけど。
実はコソコソ隠れて人の告白を盗み聞きしてたとか。
人としてあんまり褒められたことじゃないし、全然カッコよくない。
でも自分の好きな人が告白されてるかもって状況に行き当たってしまったら気になっちゃうのはよくわかる。
俺にもめちゃくちゃ心当たりあるもん。
知らんぷりすりゃいいのに、どうしてもどうしても気になって。
しなくていい盗み聞きをして、翔ちゃんと雅紀の仲を盛大に勘違いしたんだ。
自分もやらかしてるから、それで翔ちゃんを責めることは出来ないよ。
それにさ、翔ちゃんが何も気にせず教室に戻っちゃってたら、たぶん俺は誰にも助けてもらえなかった。
翔ちゃんが来てくれなかったら、あの後どうなっていたか分からない。
本人が話してくれたあの日の翔ちゃんは、全然カッコよくなくて、俺が思ってたような王子さまじゃなかったけど。
翔ちゃんが恩人であることに変わりはないし。
何より、そんなカッコ悪い翔ちゃんも愛おしいと思ってる自分がいる。
そんなことしちゃうくらい俺のこと好きだったんだって思うと嬉しくなっちゃうんだ。
俺も相当だよね。