第20章 卒業式
「丸山の告白を邪魔するつもりはなかったし、その時点で丸山があんなことするって予想してたわけでもない。ただ、どうしても気になって…気付かなかったフリをして立ち去ることが出来なくて…」
俺の後をつけて、俺たちから見えない場所に隠れていたらしい。
「ごめん…」
シュンと項垂れてる翔ちゃん。
でも俺はその告白内容にびっくりしちゃって、すぐには何も返せなかった。
だって…どういうこと?
あの時、翔ちゃんが最初からあの場所にいた?
後をつけて、告白されるのを立ち聞きしてた?
コソコソと木の陰に隠れて盗み聞きしてる翔ちゃんを想像して、俺の記憶の中のキラキラした本物の王子さまみたいな姿との落差に頭を抱えたくなった。
そりゃ、翔ちゃんだって人間で。
苦手なことだってあるし、ちょっと情けなかったりヘタレなところもあるって、今の俺は知ってる。
それでも、あの日の思い出はやっぱり特別だったから。
深ーいため息を吐いたら、もとから撫で気味の翔ちゃんの肩が更にがっくり落ちてしまったけど。
ため息くらいは許してほしい。
大切な思い出がガラガラ音を立てて崩れた…とまでは言わないけど、ピシッとヒビが入ったくらいの気分ではあるんだから。