第20章 卒業式
まだ翔ちゃんのことを単なるクラスメイトとしか認識してなかったあの頃。
学園の王子さまって呼ばれてた翔ちゃんは完璧すぎて。
接点がなくて何も知らなかったくせに、ひねくれてる俺はちょっと胡散臭いとか思ってた。
だけど…
「絶体絶命のピンチに助けに来てくれた翔ちゃんは本当に王子さまだった。翔ちゃんの周りだけすごくキラキラ光って見えた」
今でも鮮明に覚えてる。
まるで少女漫画みたいなワンシーン。
まぁ、男の俺がヒロインポジションなのはどうなの?って感じだけどさ。
「俺ね、あの瞬間に恋に落ちたの」
颯爽と現れた王子さまに恋をして。
その優しくて誠実な人柄を知ってますます好きになった。
「ここはイヤな思い出もたくさんあるけど、それでも俺にとってはすごく大切な場所だから…最後に翔ちゃんと来たかったの」
いつから好きだったのか…
どうして好きになったのか…
今まで恥ずかしくてはっきり言葉にしたことはなかったけど。
最後だから伝えたかった。
翔ちゃんに知ってほしいと思ったんだ。
「あの日から、ずっとずっと翔ちゃんのことが大好きだよ」
まっすぐ翔ちゃんの目を見て伝えたら、翔ちゃんの顔はみるみる赤く染っていった。