第20章 卒業式
校庭から校舎の横をぐるりとまわって、最後にたどり着いたのは裏庭。
ある意味一番思い出が多い場所。
まぁ、圧倒的にイヤな思い出が多いんだけど。
丸山くんに襲われかけたあの日の恐怖は、今でも完全には消えてないし。
謎の嫌がらせ手紙攻撃のあと、意味不明な呼び出しをくらったのもここ。
翔ちゃんと雅紀の関係を誤解して、心臓が止まりそうなくらい衝撃を受けたのも。
翔ちゃんと離れる決意をして胸が引き裂かれるような思いをしたのもここだ。
ここに来ると今でも体が勝手に震えるし、息もちょっとしづらい。
「カズ、大丈夫?」
全く喋らなくなった俺の背中を翔ちゃんが心配そうにさすってくれたから、意識して大きく息を吸った。
翔ちゃんが一緒だから大丈夫だけど。
本音を言えば好き好んで近づきたい場所ではない。
「ここはもういいよ、早く移動しよう」
翔ちゃんもそんな俺のことを分かってるから、長居は無用とばかりにさっさと移動しようとするけど。
「待って!」
慌てて翔ちゃんの手を掴んで引き止めた。
「カズ?」
翔ちゃんはすぐに足を止めてくれたものの怪訝そうな顔をしてる。
そうだよね。
俺だって本当は早く移動したいよ。
長く居たい場所じゃないもん。
それでもここは俺にとって特別な場所だから。
最後に翔ちゃんと来たかった。
この場所で翔ちゃんに伝えたかった。
「あのね、俺はここで翔ちゃんに恋をしたんだよ」