第20章 卒業式
「智たちは?何もなかった?」
智が落ち着いたところで、俺も気になっていたことを聞いてみた。
正直、逃げてる時は他のことを考える余裕なんてなかったんだけど。
よく考えたら智たちも俺たちと同じような目に遭ってる可能性が高いことに気づいて。
だって潤くんは翔ちゃんに負けないくらいイケメンでモテモテだし。智もめちゃくちゃ可愛し。
ひそかに2人を狙ってたやつは多いはず。
むしろ俺より智に押し寄せてる人数の方が多いんじゃ…なんて心配してたんだけど。
「ああ、大丈夫。俺たちは何もなかったよ」
智は安心させるように俺の心配をあっさりと否定して。
今度は智たちのことを話してくれた。
智たちは俺たちと別れてすぐに美術室に移動して。
後輩たちと別れを済ませた後は、準備室で顧問の先生と話し込んでいたらしい。
何やら外が騒がしいことには気付いていたものの、まさかその渦中に俺たちがいるなんて知らないから。
卒業式だからってずいぶんはっちゃけたやつらがいるなーくらいにしか思ってなかったんだって。
事態を把握したのはだいぶ経ってから。
騒ぎに俺たちが巻き込まれてることを知った美術部の後輩くんがわざわざ智たちに知らせに行ってくれたらしい。
正確には、智や潤くんを探してるやつもかなりの数いるから、騒ぎが落ち着くまでこのまま隠れてた方がいいって伝えに来てくれたんだそうだ。
あぁ、やっぱり智たちも狙われてたんだ…