第17章 風邪引き
翌日には、翔は復活した。
多少咳は残っているものの、すっかり元気そうだ。
昨日はあんなにしんどそうだったのに、信じられない回復力だな。
「愛の力だよ」なーんて、翔は言ってたけど。
どっちかと言うと気合いとか根性とか、そんなんな気がする。
ニノを泣かせないために、自分の体調までコントロール出来るとかマジですげーと思うよ。
幸い、ニノには風邪はうつらなかったようで。
「翔ちゃん、あーんして?」
「あーん…って、何これ?」
「愛の薬だよ♡早く咳も治りますように♡」
「ありがとう、カズ」
今日も元気にイチャコラしてる。
しかしニノにはうつらなかった風邪を、何故か俺はもらってしまったようで。
熱はないが喉がイガイガする。
………あれ?
翔が治ったの、実は俺のおかげじゃね?
はたと気づいてしまったけれど、面倒臭いことになりそうだからバカップルには黙っておこう。
「ん…ん゙ー…」
「潤、大丈夫?」
違和感のあるのどを押さえていたら、智が心配そうにやってきて。
「これあげる」
はいっと手を差し出した。
「なに?」
「のど飴。ニノにもらってきた」
ああ、さっき翔に食べさせてた愛の薬とやらか。
ってか、黙ってても俺の体調不良は智にはバレていたらしい。
それならば…
「食べさせてよ」
「え!?///」
手は出さず、あーんと口を開けて催促したら、智は途端に赤くなった。
智は今日も可愛い。
翔がニノのために風邪を治したなら、俺も智の愛の力で治すから。
「ほら、早く!」
「もう…今日は潤が甘えん坊なの?」
「そうだよ。昨日はニノに譲ったんだから、今日は俺の番」
堂々と答えたら、智はちょっと照れたようにはにかんで。
仕方ないなって、赤い顔のまま飴を食べさせてくれた。
ポイッと放り込まれた飴は思っていた以上に甘くて。
その甘さと智の笑顔で喉の痛みも引いていく気がした。