第14章 修学旅行
「おはよう、カズ」
「翔ちゃーん♡」
両手を広げてみれば、カズは迷うことなく飛び込んできてくれる。
起きて数分でカズを抱き締められるなんて、こんな幸せなことある?
…まぁ、本音を言えばね。
本当は数分も待たずに起きた瞬間からカズと一緒にいたかったよ。
カズが眠りに落ちる瞬間も、可愛い寝顔も、寝起きも全部全部見たかったよ。
せっかくのお泊まりなのに!
絶対同じ部屋に泊まれると思ってたのに!
まさかの3人部屋なんだもんな…
ホテルを決めた先生を恨むよ…
でも、もしカズと同じ部屋だったら一晩中寝ずにカズの寝顔を見続けてしまっていた気がする。
2日間一睡もしなかったら、さすがに日中の体調にも影響が出てしまいそうだし。
カズとの初旅行を楽しめなかったら、それこそ後悔が残る。
そう考えれば今回は違う部屋で良かったのかもしれない……と、無理やり自分を納得させてみる。
いいんだ!いつか学校行事とかじゃなく、個人的にカズと旅行に行くから!
その時まで楽しみに取っておくんだ!
…っていうか、旅行の時だけじゃなくて。
いつか、昼も夜も同じ空間で一緒に生活出来たらいいなって思う。
常に一緒にいることが当たり前になる未来とか、夢みたいだよな…
いや!いやいや!
夢で終わらせるんじゃなくて!
現実にするために努力を惜しまず頑張ろう!
そうしたら、いつかきっと…きっとね…
そんな決意を胸に、カズを抱き締める腕にぎゅっと力を込めた。