第11章 新年度 3年生
動かなくなった潤の頬がじわじわ赤く染っていく。
「潤はちがうの?」
ねぇ、俺は嬉しかったんだよ?
ニノとみんなと一緒なのも嬉しい。
それはもちろん嬉しい。
でも何よりも潤と一緒なのがすごく嬉しいのに。
文句ばっかり言う潤は俺と同じ気持ちじゃないのかと思ったら、無性に腹が立って…そしてちょっと悲しくなったんだ。
嬉しいのは俺だけ?
好きなのも…俺だけ?
いつの間にか俯いてしまっていた視界に上履きが入り込んできたと思ったら、突然ふわりと抱き締められて。
「え?……わっ!!」
驚いて顔を上げたら、触れそうなくらいの超至近距離に潤の顔があって仰け反ってしまった。
だいぶ慣れたとはいえ、やっぱり突然の潤のどアップは心臓に悪い。
でも潤の手は全く緩まないから逃げ出せない。
「違わない。俺も嬉しいよ、智と一緒で」
俺を抱きしめる力がぎゅっと強くなって。
その顔も声もとても真剣で。
ちゃんと心からそう思ってるって伝わってくる。
ほら!やっぱり嬉しいんじゃん!
それなら文句なんて言うなよな!
また怒りが込み上げてきて。
思わず目の前の胸をグーパンした。
「潤のばか」
「ごめん」
「最初から素直に喜べ、ばか」
「うん、ごめん」
潤はされるがままでひたすら謝罪を繰り返すから、俺の怒りもすぐに消えて。
グーパンの代わりに潤の胸に頭をグリグリ擦り付けた。
ははっと嬉しそうに笑う声が頭に直接響いて。
俺を抱きしめる腕から好きだよって気持ちが伝わってくるみたいで。
正直、胸がキュンキュンしたけど。
一連のやり取りをしっかりばっちりニノに見られてて。
散々からかわれて恥ずかしい思いをしたから。
「潤のせいだ、ばか」
「イテっ…」
さっきより力を込めて、もう一度潤にグーパンしておいた。