第9章 バレンタイン
俺が動いたことで2人も腹を括ったのか二宮先輩からチョコを1つずつ受け取った。
「俺もいただきます!先輩の手作りなんて死ぬほど嬉しいっす!」
「俺も!死んでも食べたいです!」
それは例え櫻井先輩に殺されても…って意味も含まれてるよね…
でも俺たちの悲壮な覚悟なんて二宮先輩に伝わる訳もなく。
「本当?無理してない?」
不安そうに確認してくる。
やめて、そのうるうるの上目遣い!
そんな気なくてもドキドキしちゃうから!
「無理なんてしてないですよ!」
「本当に嬉しいです!」
「ありがとうございます!」
もう一度ペコリと頭を下げたら、二宮先輩はそれはそれは嬉しそうににっこりと微笑んだ。
なんて可愛らしい!!
まさに天使の笑顔!!
櫻井先輩は変わらずものすごい殺気を放っているけど、この笑顔が守れたんだから良しとしよう。うん。
「翔ちゃん、みんなが受け取ってくれたよ♡」
にこにこと二宮先輩が振り向くと、櫻井先輩は一瞬で殺気を消してにこやかな笑顔を浮かべる。
「良かったね、カズ。でもちょっと妬いちゃうな」
いや、こっちにちらりと向けられた目が全く笑ってなくて怖ぇ!顔は笑ってるから余計に怖ぇ!
「もう、翔ちゃんたら///あれは義理だよ?本命は翔ちゃんだけ♡」
「カズ…」
でも二宮先輩がぎゅっと抱きついたら、櫻井先輩の顔がへにゃっと崩れた。
さっきまで殺気を放っていた人と同一人物とは思えない変わりっぷりだ。
「翔ちゃんだけが大好きだもん♡」
「俺もカズだけが大好きだよ♡」
「翔ちゃん♡」
「カズ♡」
はいはい、ご馳走さまです…
としか言いようのないベタ甘な空気に、思わず苦笑してしまう。
でもこのやり取りのおかげで櫻井先輩の機嫌は直り、俺たちはチクチク嫌味を言われるだけで済んだのだった。