第9章 バレンタイン
-Oside-
「ねぇねぇ、バレンタインは何作る?」
にこにこご機嫌な様子のニノが、作るのが当然みたいな口調でそんなことを聞いてきたのは、バレンタインが間近に迫った2月上旬。
「いや…何も作る予定はないけど…」
このパターンは…と内心苦笑いしつつ、とりあえず普通に答えてみる。
この時期はどこに行ってもバレンタイン一色だから、さすがにバレンタイン自体を忘れてたわけじゃないけど。
潤が今年も何か作ってくれるかなーとかうっすら期待してたくらいで。
俺がどうこう…とは、本当に何も考えてなかった。
でも俺の答えはニノのお気に召さなかったようだ。
「やだ!一緒に作るの!」
ぷーっとモチモチのほっぺたを膨らませて駄々を捏ねる。
ああ、やっぱり。
予想通りの流れにちょっと笑ってしまう。
「一緒に作るの?」
「そう!」
「俺とニノで?」
一応確認してみたら、ニノはにやっといたずらっぽく笑って。
完全なる傍観者として呑気に聞いてた風間をビシッと指さした。
「あと風間も!」
「ええっ!?俺!?」
ああ、今回は風間も巻き込まれるのか。
突然指名された風間は目を白黒させて驚いてる。
まぁ、驚くよな。
ニノのこういうお誘いはいつも何の前触れもなく突然だからなぁ。
あ、ちなみにだけど。
この会話、ニノと2人でこっそりしてた訳じゃないから。
いつも通りみんな一緒にいて、その中での雑談だから、当然翔くんも潤も雅紀も聞いてる。
ニノは隠す気が全然ないんだろう。
バレンタインに手作りの何かがもらえると聞いて、翔くんはかなり嬉しそうだ。