第8章 誕生祝い to Sho
お礼は聞いたし、もうそろそろ移動してスケートしたいんだけど。
翔の惚気は一向に止まらない。
「料理とケーキだけでもカズの愛をひしひしと感じたんだけどさ、見てよコレ!」
左手の薬指でキラリと光る指輪をババーンと顔の前に突きつけられる。
「すごくない?これが手作りだなんて信じられる?既製品以上じゃない?しかもカズの愛情たっぷり!」
「はぁ…」
「ほら!見て!よーく見て!」
「………」
確かに上手に出来ている。
言われなければ手作りだとは思えないくらい。
でも、ぐいぐい迫ってくる翔の圧がすごくて、相槌を打つ気さえも失せていく。
もう無理…
誰か変わってくれ…
助けを求めて視線をさまよわせたけど、雅紀と風間は巻き込まれたら堪らないとばかりに揃って明後日の方を向いた。
おい!薄情者!助けろよ!
じゃあ、智は…と思ったけど。
智は智でニノにとっ捕まってた。
きっとこちらと同じような状況で、ニノの惚気を聞かされてるんだろう。
でも、俺と違って智は全然嫌がってなくて。
ニノと2人でキャッキャと楽しそうに盛り上がってる。
智たちに気を取られて上の空になっていたら、翔にぐいっと引き戻された。
「おい、潤!聞いてるか?」
「あー、聞いてる聞いてる…」
まだ惚気けることがあんのかよ…
まぁ、仕方ない。
誕生日祝いとして、今日はもうちょっとだけ付き合ってやるか。
なんだかんだ言ったって、お前が幸せなら俺も幸せなんだ。
大切な親友だから。
「でさぁ、その時のカズが王子様みたいでさ!あんだけ可愛いのにカッコ良さもあるとか…」
…出来たら惚気はほどほどにしてほしいけどな!