第5章 恋敵
智は今年もクラスの内装デザインを担当してて、美術部として絵の展示もするみたいなのに。
今年は更に入場門作りにも関わってる。
文化祭実行委員の中には門班というのがあって、入場門はこの人たちが作るんだけど。
毎年この門班メンバー以外にも美術部から有志を募っているらしい。
俺は正直生徒会の仕事をするまで、あの門を誰が作ってるのかなんて気にしたこともなくて。
知っても、へぇー…ってくらいだったんだけど。
そこに智が参加することにしたって聞いた時はめちゃくちゃ驚いた。
智はこういうの面倒くさがりそうっていうか。
人付き合いとかあんま得意じゃないし。
ものづくりは好きなんだろうけど、1人で黙々と作業してるのが好きなんだと思ってた。
去年は参加どころか、そういう募集があることすら一言も言ってなかったし。
だから、智が自ら参加を決めたって言うのが本当に意外で。
なんで?って聞いてみた。
そしたらね、智の答えは俺が思ってもなかったものだった。
「ニノが生徒会で頑張ってるから…」
最初は智が何言ってるのか分からなくて。
だって質問と答えが合ってなくない?
「どういうこと?」
素直に首を傾げたら
「ニノが頑張ってるから、俺も何か出来ないかなって考えたんだ。俺に出来ることなんか限られてるし、門を作ったって直接ニノの仕事を手伝える訳じゃないけど…俺も俺に出来ることを頑張ってみようって思ってさ」
智はちょっと照れた顔をしながらも、言葉を足して教えてくれた。