第1章 コニャック
「今日こそ飲み比べよ!」
そんなあいつの宣戦布告から俺たちは街のとある小さな酒屋に居る。
最初こそ威勢をはっていたが、こいつはすっかり顔を真っ赤にしているのを俺は冷静に見物していた。
「ねぇ飲んでるー?あんたちっとも顔色変わってないじゃない」
まぁお前と比べればまだまだ酔っ払ってなんかいないが。
「ねぇロー…あたしあんたがベロベロになるまで酔わせてみたいんだけど?」
挑発的な笑みがこちらを見つめている。
「悪りぃがお前とじゃ無理だな」
エリナは酒には強いが好むものの一つ一つがアルコール度数が高い傾向にある。
にも関わらず濃いめが好きだから酔いが回るのも早いし出来上がるのも早い。
まぁずっとこのペースを維持しているのだから他より酒には強い方だ。
「ほぉら、飲みな」
ローの空いたグラスにトポトポと酒を注ぐエリナ。
だいたい同じ酒を飲んで比べるものなのにラム飽きた、と言い出した彼女がブランデーを飲んでいる時点でこの勝負は正当じゃない。
「ちょっとお手洗い行ってくる」
そう言って席を立つ彼女を目線で追う。
足元はまだふらついていないみたいだ。
エリナが席を立った瞬間来店した二人組の客が自分の後ろを騒がしく通り過ぎる。
「あーマジ飲みたい気分!」
「ねぇちょっと!彼超イケメンじゃない⁉」
「え?うわ〜当たり!」
別にナルシストと思う所はないが背中に視線を感じると思えば案の定女二人組が隣のカウンターへ座ってきた。
濃い化粧を塗りたくった目元から選りすぐるような熱視線が向けられているのを横目で感じる。