第1章 大好きな白
謙信「葵」
葵「謙信様・・・っ・・・なんですか?」
謙信「まだ怒っておるのか?」
夫婦の寝室に二人はいた。
藍はというと連日子の世話で、
疲れている葵のことを思い、
乳母の下に預けられている。
基本は葵が育てているが、
謙信の立場が立場ゆえか、
乳母をつけられているからだ。
葵「謙信様・・・は、
藍のことが嫌いですか?」
謙信「そうはいっておらんだろう」
葵「ではなんで・・・」
謙信「笑わぬか・・・?」
葵「え?」
謙信の言葉に葵は首を傾げる。
謙信「子に妬いたのだ・・・
お前は俺の物だとな・・・
幾度と身体をつなぎ、
睦言を言い合い、
婚姻を結び、
こうして子までなしたというのに、
お前への思いが日ごと強くなる気がするのだ・・・
むしろいくらお前に注いでも、
足りぬくらいにな・・・」
謙信は自嘲めいた笑みを浮かべていた。