第1章 大好きな白
謙信「(不機嫌そう)」
信玄「謙信、殺気をしまえ」
謙信「殺気などだしておらん」
信玄「言葉を変える、不機嫌そうな顔をやめろ」
佐助「謙信様。新しい手ぬぐいです」
謙信は佐助から濡れた手ぬぐいを受け取ると、
頬にあてていた。
謙信の頬には赤い紅葉がくっきりと浮かんでいる。
佐助「で・・・聞きたくはないですが、
何をなさったんですか?」
信玄「あの姫が怒るなどよっぽどだろ?」
謙信「あれが俺の葵を独り占めしているのが悪い」
佐助「独り占めって赤子と母はそういうもんですよ?」
信玄「あれって藍はお前の子だろ?」
謙信「分かっておる。だがあれの乳は俺の物だろ?」
佐助「それを俺らに言わないでください。
謙信様の物だとしても今は娘さんの物です」
真顔で言い放つ謙信を、佐助は諫める。
謙信「ああ、だから俺は最大限に譲歩したうえで、
葵に言ったのだ」
佐助「すごく嫌な予感がしますが何をですか?」
謙信「俺にもお前の乳を吸わせろとな」
謙信の言葉に佐助はめまいがした。
そして思う。葵さん、
本当にこの人と夫婦でいいんですか・・・と。