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【HQ】ハイキューSS

第3章 赤葦、木兎の夏②


暗闇の中に浮かび上がる淡いライトと提灯の色が幻想的な雰囲気を醸し出す。
漂う屋台の香りと、チームメイトの笑い声が唯一自分を現実に繋ぎ止めてくれるようだ。
「お待たせ!」
美人ぞろいと評判の梟谷マネージャー陣だが、浴衣を着た姿を見ると納得だ。
「うぉぉぉぉ」
叫ぶチームメイトに、余りの感動で逆に大人しくなる木兎さん。他の男に目を付けられまいと、急いで幼馴染の横に移動してしっかりとガードをする。
アイツの横を昔のように歩く必要がなくなった俺は、食欲を満たすべく屋台に目を移す。
“5%の恋心もいつか100%になる”木葉さんの言葉を焼きそばと一緒に飲み込んだ。


「やっぱさ、うなじだよな・・」
木葉さんが肩に手を回しながら耳元で囁いた。
「何がです?」
「だーかーら!女の子の浴衣の色っぽい所!なぁ!」
目の前の見慣れたうなじに視線を移すが、これといって何も浮かばない。
「うなじはうなじですけどね」
オーバーに頭を抱える先輩をよそに、うなじから背中にかけて日焼けのせい皮が少し剥けているのに気付く。
「剥けてるぞ、皮」
「きゃぁん!」
指先で触れると、普段より高い声で反応が返ってきた。
「びっくりした・・」
「悪い。皮剥けてるから」
眉を下げ、不安げに手でうなじを押さえる。どうしよう・・光太郎に気付かれたかな、小さく呟く姿にかき氷のスプーンに付いた赤を思い出して、面白くない、と思う自分は一体何なんだろう?

「ねぇねぇ、一口頂戴!」
焼きそばを狙って右腕に絡みつく。肌のことは気にしないことにしたらしい。お前の切り替えの早さは何なんだよ。
「おい、腕!」
腕を振りほどくのと同時に、心に渦巻いた変な気持ちも一緒に振り払いたかっただけだったのに。彼女の顔とチームメイトが振り返ったのを見て思いの外、大声で言ってしまったことに気付く。
「悪い」
「ごめん」
俺たちの間に流れる空気は少し変だけど、喧嘩したわけじゃないと感じたチームメイトはそれぞれの会話と笑顔に戻っていった。
木葉さんの視線は感じたけれど、屋台に夢中で気付かないふりをする。
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