第4章 懐かしい味と、優しい味
『痛たたたたたたっ!薬研さん、ちょっと待ってお願い!!』
薬「悪いな、大将。そりゃあ聞けない願いだ」
ひらりと白衣を翻しながら、右へ左へと楽しそ・・・忙しそうに動く薬研さんに悲鳴を上げれば、壁に背を預けて私たちを見守る長谷部さんがため息を吐いた。
長「少々の事は我慢してください、主」
『少々?!これが?!だってめちゃくちゃピリピリ痛いんですけど?!』
あの怒涛?の演練が終わってから、私はその場で長谷部さんに担がれ馬に乗せられ、来た時と同じように鶴丸さんに同乗されながら本丸に戻った。
馬に乗せられた時、私よりも重傷だったにっかりさんを馬にと言ったけど、その当の本人であるにっかりさんは来た時と差ほど変わらないくらい回復していて。
というより、よくよく見てみれば他にも多少なりともケガをしていたはずの人も、ケロリと治っていて。
演練で受けた傷は演練場を出たらすぐに治ってしまうと聞いていたのに、なぜ私だけいつまでもキズが?と本丸に帰ってからこんのすけに聞けば・・・
「キズの回復は刀剣男士のみ、作用が回るということをお忘れでございましたか?」
・・・なんて、あっけらかんと言われ。
今に至る、訳で。
他のみんなは完全完治しているのに、私だけがあの日から毎日傷の消毒を受けている。
前に薬研さんに消毒や手当をして貰った時も騒ぎたくなる位だったけど、そこはグッと我慢して耐えた。
けど今は、ある意味・・・あの演練で私の本性丸出しにしちゃった感じもあって痛いものは痛い!と口に出すことにした。
薬「消毒はしたがまだ数日はかかると思ってくれた方がいい。刀傷はそうそう早く治るもんじゃないからな。って事で大将、化膿止めとして俺が開発したこの飲み薬を今日から毎日グイッと飲んでくれ」
いや、グイッとって・・・
手渡された小瓶にはなんとも言い難い色をした怪しげな液体が光に揺れている。
薬「まだ試験段階ではあるが、山姥切には効いたようだから大丈夫だ」
山姥切さんに、これを?
いやいやいや、それってホントに大丈夫なの?!
だっていつだったか山姥切さんって、薬研さんの試薬を飲んで呻き声を上げてたよ?!
手のひらに乗せられている小瓶をチラリと見て、腹を括るかどうするか・・・迷う。