第1章 明日って必ず来るものじゃなかった
ポタポタと流れていく涙にみんなの姿が滲む。
『もう···いいよ、こんのすけ』
「ご納得、頂けましたか?ならば、元いた場所へと戻りましょう」
来た時と同じように光に包まれ···次に連れて行かれた場所は···
『あの世って、意外と日本っぽいんだね』
苦笑を浮かべながら涙を拭えば、こんのすけはまた、ふわりと柔らかそうな尻尾をひと振りして見せた。
「ここは本丸といって、本日よりこちらで様々なお仕事をしていただきます」
『ちょっと待って。お仕事って?私が自分で言うのもなんだけど···死んじゃったんじゃないの?』
「もちろん、先程ご確認頂きました通り···でごさいますよ?」
『私が欲しい答えはそうじゃなくて!本丸ってどういう事!』
「あー···まずはそこからでごさいますか···」
なんで急に面倒臭そうな顔すんの?!
「ここは、政府が管理する刀剣男士たる者たちが集まり生活を共にしている、言わば ‘ 家 ’ でごさいます。貴方様は本日付で政府管轄下の審神者となり、その者たちのまとめ役···言うなれば、この本丸の主になります」
審神者?主?···全然言ってることが分からない。
そもそも刀剣男士って、なに?!
『なんか頭の中が混乱して情報処理が追いつかない···』
けど、ただ一つだけ分かるのは。
私はもう、この世界にしか···存在していないという事。
この場所にしか、私の居場所がないって事。
だったら、流れに身を任せるしか···ない、よね。
『こんのすけ、まだよく分からない事ばかりだらけだけど、そのお役目、私でお役に立てるなら···お引き受けします』
「では、政府の方には届出は済ませておきます。それでは主、これから宜しくお願い申し上げます」
なんとなく仰々しくお互いにお辞儀をして、これからの事を詳しく説明するからと奥の部屋へと案内される。
人気のない、長い長い廊下を抜けて、さぁこの階段を上がれば、主専用のお部屋になりますぞ・・・と、ふんわり尻尾を揺らしながらこんのすけはちょびちょびと段を進む。
その個人部屋へと向かえば、襖の前には姿勢正しく立つ人影があった。
···ここには私以外にも人間が?
そう思いつつも、こんのすけに案内されるがままに階段を上がれば、その人は私を見つけて恭しく頭を下げた。