第3章 最初のお仕事
突然ここに連れて来られてから、早数日。
少しでも早くみんなの役に立てるようにならなきゃ!と毎日頑張るも、教わる事が多過ぎて今日は早くもグッタリとなる。
長谷部さんとのお勉強会は、事細かにいろいろな説明をしてくれるんだけど・・・特に戦術云々になると・・・
長「なので・・・・・・ですから、そのような時は短刀を先に・・・」
とにかく、話が長くなるとずっとひとつの事を過去の事例を織り交ぜながら説明が続くわけで、チラリと横目で空の色を見てこっそりとあくびを噛み殺した瞬間に長谷部さんと目が合ってしまう。
長「主、俺の指導は退屈ですか?」
『え?!あ、いえ全然!』
はぁ・・・と大きくため息をついた長谷部さんが、チラリと私を見ては目を閉じて考え込んでしまう。
絶対、ぼーっと聞いてたのバレてるよね・・・
長「今日はここまでにしましょう。この後、夕餉の時間までは自由にお過ごし下さい」
『自由にって・・・いいんですか?』
机の上に広げた書物をひとつずつ片付け出す長谷部さんに聞けば、その手を止めることなく視線だけを外に向けて柔らかい表情を見せる。
長「こんな青空広がる日にいつまでも主を部屋に閉じ込めてくおく程、俺は鬼ではありませんよ。それに、毎日きちんと学ぶ姿を見てますから、時には息抜きも必要でしょう」
ではまた夕餉の時に、と畏まったお辞儀をして長谷部さんは部屋から出て行ってしまった。
なんか私、もしかして長谷部さんを怒らせてしまったんじゃないかとも・・・思えなくもないんだけど。
いつもならどれだけ天気が良くても勉強時間を短縮する事などはなかったし。
なのに、今日に限って普段の半分の時間で終わりになってしまった。
それを考えると、やはりさっきので呆れられたとしか・・・?
夕飯の時間までは自由にって言っても、そもそもひとり歩きは危ないからと言われている。
・・・あれ?
そう言えば今更だけど、ここでの生活環境が整うまでは長谷部さんが暫く近侍を引き受けるとか言ってなかったっけ?
それなのに長谷部さんは部屋から出て行ってしまった。
って事は、結論から言って長谷部さんが戻って来なければ自由にと言われても外へ出ることが出来ない?!
それに気付いた私は長谷部さんの後を追うように重苦しく閉じられた襖を思い切り開けながらその名を呼んだ。