第1章 明日って必ず来るものじゃなかった
「あんた、ほんっっっっっとに刀好きだよね」
やや呆れ顔で言う友達に、私はキラリと輝く笑顔を向ける。
『刀っていいよ~?だって歴史を感じるじゃない?』
待ちに待った刀剣展示会のチケットをヒラヒラとさせながら、早く入場出来ないものかと列を覗く。
「言いたいことは分かるけど···年頃の女の子が夢中になるもんでもないと思うけど?」
それでもいいの!好きなんだから!と息巻いて、先に手に入れたパンフレットを開きながら、写真や説明文に目を落とす。
今日のお目当ては···とページを眺めては、その刀身の美しさにため息が零れた。
「世が世なら、あんたも一振り腰に下げて歩いてたかも知れないわよね?小さい頃からあんたのじいちゃんに稽古つけて貰ってるし?」
『おじいちゃんの事はいいって。私がどんだけ練習して大会で優勝した!って言ってもさ、和奏が女じゃなかったらなぁ···とか、空を見上げて愚痴るんだから』
子供の頃から祖父の道場で、それこそ最初は時代劇を見て、チャンバラ遊びの延長線として始めた事だけど。
それが楽しくて、大好きなおじいちゃんに褒めて欲しくて、練習して、練習して···ここまで上達したのにそれを愚痴られるとか···ないわ···
私だって、自分が女じゃなかったら···もっともっと朝から晩まで稽古して刀振りかざして歩けるのに。
って、それじゃいまの時代だと捕まっちゃうか。
銃刀法違反···だっけ?
「顔はカワイイ方だと思うけど、腕っぷしが良くて負け知らずだとか···オマケに刀ヲタク···勿体ないわ···」
『うるさいよ、ホントに』
ヤレヤレとおかしなポーズを見せる友達に軽くパンチをして、やっと順番が来たゲートをくぐった。