第36章 苦き夢と甘き現(徳川家康)※閲覧注意
忍「もうだからそこまで、
食い意地はってないってば」
忍は空の器の上に、
饅頭を一個ずつ乗せ、
家康と自分の手前においた。
家康と二人「いただきます」と、
軽く言葉をつむぐと、
ともに饅頭とお茶を堪能する。
忍「おいしいね家康」
家康「まあね。政宗さんだし」
家康は饅頭を食べつつそんなことをいう。
家康「(甘さも甘いけど、
そこまでしつこくない。
やっぱり政宗さん・・・)」
饅頭の味に家康は確信した。
最初から忍が誰かと、
お茶をするのを予測していると・・・
金平糖という甘味好きの信長、
味の分からない光秀、
食に興味のない三成あたりならともかく、
忍の世話をやきたがる秀吉や、
自分はどちらかというと、
甘いモノは好きではない。
信長も甘味は好むが、
天下布武をなす大事な身体ということもあり、
過剰な甘味は周りが控えさせている。
おまけに忍は、
人がいいくらいのお人よしだ。
政宗からもらった饅頭を、
一人占めにしようとしないことぐらい、
政宗でなくても考えるのはたやすい。
だから器に入っていた饅頭は、
最初から忍が、
二つ食べる分ではなく、
忍ともう一人、
安土武将の誰かの分だろうと・・・