第4章 君に捧げる恋歌(今川義元)
その日から義元は時折その場所を訪れ、
少女の歌声を聞いていた。
少女も義元の訪れを気にすることなく、
ただ歌を奏でていく。
そして少女が歌を歌い終えると、
お互いそのままその場所を後にしていた。
義元は少女の名や少女のことを、
もっと知りたいとは思っていたが、
だが知ろうとすれば、
少女がもう自分に会ってくれないのでは、
もうその歌声が聞けなくなるのでは、
そう考えてそれ以上、
踏み込むことはしようとしなかった。
ある日、少女の歌声を幾度と聞いたからだろうか、
義元はその歌を無意識に口ずさんでいた。
謙信「おいなんだそれは」
義元「あ・・・なんでもない」
謙信に知られてはいけないと義元はごまかす。
佐助「なんでもなくはないでしょう。
義元さんがなぜその歌を、
知っているのかは知りませんが」
そばにいた佐助はそう告げる。