第4章 君に捧げる恋歌(今川義元)
義元「昼間ね・・・不思議な女の子を見たんだ」
佐助「女の子ですか・・・
不思議とはなんなんですか?」
義元「そうだね。その子は何か、
俺の知らない歌を歌っていたよ。
その姿が今にも消えそうなくらい儚くてね・・・
あ、少しだけ謙信に似ていたかな。
俺はその子を見つめることしかできなかったんだ。
その子は俺に気づくと本当に消えちゃったんだ」
佐助「謙信様に似ているどうこうは別として、
本当に不思議な話ですね。まるで人魚姫だな」
義元「人魚姫?」
佐助「俺のいた国の御伽話です。
上半身は人間、下半身は魚の女の人です」
義元「なにそれ怖いなぁ・・・どんな話なの?」
佐助「怖い話ではないですよ。
人間の男に恋をした人魚姫が、
声と引き換えに人間の足を手に入れるも、
男はほかの女と結ばれて、
人魚姫は泡となって、
消えてしまうという悲しい話です」
義元「そう・・・」
佐助「もっともこの話にはいろいろ結末があって、
人間の男と結ばれる、
というのもありますが・・・」
義元「それが本当なら、
俺はその男にはなりたくはないな」
あの歌声を奪ってしまうのも
彼女を泡にして消してしまうのもごめんだ・・・
義元はそんなことを思っていた。