第3章 いらない、朝
「凪っ」
「なに、梨花走るなんて珍しい。」
汗かくの嫌い。
メイク崩れる。
梨花の口癖。
「どーしたの?」
「ねぇ凪、あの子、あの子まだいるの?」
「湊?」
「そう!それ!」
「?」
「見てこれ」
食堂で一人、サラダを頬張るあたしの目の前におかれたのは1冊の週刊誌。
見開きカラーでデカデカと1面を飾ってるのは、よく知る人物だ。
「湊っ?」
「そう、湊。雰囲気全然違うから、わかんなかったわ」
「…………」
「なんか見たことあるなぁくらいに思ってたのよ、あの子。でもさ、あそこまでかわいい子なら忘れるはずないと思ったの!見てよこれ!詐欺よ?詐欺!全然雰囲気違うんだもん、知的でクールがあきれるわよね。なんなのあの生意気でバカみたいになつっこい笑顔。かわいすきじゃない?」
興奮してるせいかな。
褒めてるのか、けなしてるのか、どっちだろう。
いや、褒めてるのか。
たぶん。
「知ってたの?」
「いや、けっこう驚いてんだけど」
「ずいぶん冷静じゃん」
「梨花が興奮してるから?人が興奮してると、冷静になれるみたい」
「自己分析いらないし」
「ごめん」
「…………あんた、とんでもないの拾ったね」
「…………」