第5章 たくみのせかい
コンッ、コンッ、コンッ
バキッ!コンコンコンコガリッ!ベキッ!ガッキン!!
「あ………すみません、鑿(のみ)折りました」
「……壊滅的に不器用なんだな、佐助は」
道具を壊した俺に信玄さまは怒るでもなく、怪我が無ければいい、と言った。
カリカリカリ、カリカリ、カリカリカリ……ふっ。サッサッ
「謙信が知ったらしつこいからな」
信玄さまのDIYは、どうやら化粧箱みたいだ。もうすでに組み上がっていて、天面に細工を施している。
「そうですね。……それ、彫刻ですか?」
「あぁ。意外に木目が揃っていたからな」
「信玄さま、ホントに器用なんですね」
大胆に彫り込んだかと思えば、薄く弱く溝を引っ掻いていく。その道の職人顔負けの技術だ。たぶん。
「ふぅ。……なんだか落ち着かないと思ったら、もうそろそろおやつの刻限じゃないか。今日はここまでにしよう」
どこかウキウキしながら道具を仕舞い、木屑を外へ払って、台所へ忍びに行く信玄さまの背中を見送った。
――本日の信玄さま――
本職も真っ青になる、信玄さま的 匠(たくみ)の世界。
**スペシャルサンクス**
小さな少年 たくみの世界&こじさん