第8章 壁外調査
しばらく辺りは馬の駆ける音だけが響く。
もしかしたら巨人に遭遇せずに帰れるかもしれない。
だが、そんな想いも虚しく、奴は突然現れた。
「……っ!」
咄嗟に刃を引き抜き、アンカーを放つ。
巨人は私を見つけると、血のついた口でニヤリと笑いながら、手を伸ばす。
恐らく、左翼側の索敵班が喰われたのだろう。
自分の仲間が喰われた。
その事実が私の中で消化された瞬間、憎しみと言う名の力が身体の底から漲ってくる。
自分に向かって伸ばされた指を全て切り落とすと、そのままアンカーを額に刺し両目を潰す。
「がぁぁぁああ!!!」
おぞましい叫び声とともに血飛沫が舞い、私の髪の毛から腰まで、上半身を汚す。
巨人が痛みにのたうちまわっている隙に背後に回り、刃を頸に食い込ませる。
そのまま腕を引けば、大きな肉塊が削ぎ落とされ巨人は蒸発を始めた。
「……ふぅっ。」
血で汚れた頬や額を濡れた服で拭う。
すると、エポニーヌが私の元に戻ってくる。
「いい子だね、エポニーヌ。」
その身体を一撫でしてから、エポニーヌに跨る。