第7章 屯所怪奇事件篇
八.
「やめて、離して!!」
雪乃が、身体をよじる。
其のたびに、少しずつナイフが動く感触がした。
そして、
「ずっと、見てたんだよ?君の事…」
と荒い息と共に囁かれる言葉。
動けば首元を裂く、と男、もとい黒い女は言った。
じわじわと、恐怖が募っていく。
もともと真選組に入隊したときから、死ぬのは怖くなかったし、殺伐とした任務で慣れていた。
けれど、今回は違った。
見知らぬ男に背後を取られたこと。
しかも首筋にナイフを突きつけられているという状況に、雪乃は、混乱し、恐怖していた。
「っ、早く誰か…っ助けて!」
雪乃が叫ぶと、
「其処までだ、黒い女…いや、男か。」
「傷害未遂、及びストーカー容疑で逮捕しますぜぃ。」
土方と沖田が後ろで刀を向けていた。
「土方さん、沖田さん…っ。」
二人へと眼を向けると、
「俺達も居るぜ。」
「ストーカーは女の敵アル!!な、ゴリラ!」
「え、なんで俺にふるの!?」
「あんたが人の姉上にそういう行為を働いているからでしょうが!!」
「雪乃ちゃん、大丈夫!?」
其の後ろから銀時、神楽、近藤、新八、山崎も顔を出した。
「くそっ、何でだよ!!」
男は逃げようとするが其れは阻止され、其の侭連行されたのであった。
「大丈夫か?雪乃。」
土方が駆け寄ってきた瞬間、雪乃は安心したのか
「お兄ちゃ…っ、怖かった…。」
と抱きついた。
肘方は其の様子に困惑したが、其の侭頭をなで、
「大丈夫だ、もうあいつは居ないから。」
と宥めるように頭を撫でたのだった。