第7章 屯所怪奇事件篇
七.
「こんな格好で本当に来るのかな…」
屯所の庭で一人、待機している雪乃は、不安そうに呟いた。
例の黒い女を捕獲するためだ、と自分に言い聞かせるが其の衣装(巫女装束+獣耳、尻尾)のせいでどうしても納得できずに考え続けていると-
「ガサッ。」
「!?」
何か物音がした。
明らかに其れは何かが動いた音だった。
「土方さん!何か動きました!!」
雪乃は、マイク付イヤフォンでそう伝える。
「分かった、今何処だ?」
「庭の真ん中辺りです。音は、塀の近くの茂みから聞こえました。」
情報を伝えると今行く、と声がして声が途切れる。
雪乃は、腰の刀に手を掛けて少しずつ近づいていく。
「誰か、居るの!?」
茂みへと其の侭走り、刀を抜いて切りつける。
だが、其処には誰も居ない。
「 み、つ、け、た。 」
直後、後ろから不気味な声がした。
「誰っ!?」
後ろには、黒い帽子、黒い服、黒い髪、黒い靴の女が立っていた。
「貴方は、誰!?姿を見せなさい!!」
雪乃は、黒い女へと刀を向ける。
すると、女は
「 み、つ、け、た。俺の、雪乃…。 」
と呟きながら歩いてくる。
そして、突如走り出し雪乃の背後へと回り込んだ。
そして、其の首筋にはナイフ。
「っ、何!?」
雪乃がうろたえながらも、抵抗しようとした瞬間、
「動けば、俺のナイフが君の首を、裂くからぁ…。」
と耳元で声がした。
耳元で聞こえた声は、男の声だった。