【B-PROJECT】あなたの瞳に永遠を誓います......
第65章 Andante
「おつかれさま〜!」
「夜叉丸さん!?」
彼は隣に腰掛けた。
「セトリ考えてるのよね?」
「はい、また出来たら見てください!」
今回は一発で合格をもらわないと。
「あれから、泣いてないの?」
さっきとは違う心配そうな声色。
眉を下げて笑う瞳と目が合った。
「はい、泣いてません」
「そう......早く泣ける日が来ればいいわね」
大きな手で頭を撫でられると、安心する。
「夜叉丸さんのほうがよっぽど......」
「うん、なーに?」
「お兄ちゃんみたいです!」
私の口元は緩んでいただろう。
そのまま、そちらを見つめると笑われた。
「ふふっ、アタシの妹なら敏腕じゃないとダメよ?やるならしっかり成果をあげるわよ!」
「はい、勿論です!!」
それからもイベント当日向けて慌ただしい日が続いていた。
「なまえちゃんは強いね。大変なのに笑ってるから」
隣同士でパソコンに向かい合っていると、つばさちゃんがそう言った。
「そうなのかな?私より、彼らの方が大変だと思う......」
「え?」
「歌う時はパートを誰かがフォローしたり、トーク番組に出てもその人の代わりに誰かがまとめたり......これはプライベートでもだね。
これから、不安なこともあるだろうけど皆は笑っていつも通りに仕事をこなしてる。
その上で私のことを心配してくれたり......本当にプロだとかそういう事以前に人として尊敬してる」
どんな時でも支えてくれる皆。
そんな彼らに何が返せるんだろう?
「なまえちゃん......」
「暗い顔をしたら心配させるから、私に出来るのはいつも通りでいること......そんなことしか出来ないから」
今出来ることを精一杯やるしかないんだ。
私に出来ることなんて限られてるんだからーー。
久々にここに来た。
「今日は来てくれてありがとう」
そう微笑んでくれたのは、私が歌手活動をしていた事務所。
ハイエッジの社長だ。
「こちらこそありがとうございます。図々しいお願いを聞き入れていただき、ありがとうございます」
「いいんだ。その代わり、ちゃんと成功させてくれるんだろ?」
「はい!」
イベント開催は目前まで迫っていた。