【B-PROJECT】あなたの瞳に永遠を誓います......
第64章 理想と現実
『声って、どうすれば出るようになりそうですか?』
『そうだね。Bプロのステージを見てたら、また、歌いたいなって思うよ』
あの日は少し雰囲気がおかしかったけど、後日会えば私達は普通だった。
あの時の空気は、きっと気のせいだよね。
『絶対に取り戻しましょうね!』
増長さんと目が合って、私は笑っていたと思う。
『ありがとう。どうしてみょうじさんはそんなに必死になってくれるの?』
私を庇って階段から落ちたといえば、あの事件のことや恋人同士だったことも明かすことになるだろう。
それを避ける為にも彼は自分の不注意で階段から落ちたことになっていた。
『私は増長さんのA&Rですからね。あと、アイドルをしている増長さんの姿をまた見たいんです』
紛れもない本当の気持ちだ。
でも、それよりも......きっと彼の心は泣いてるから。
あの夢を叶える為には声が必要なんだ。
『ありがとう。また、歌えるかな?』
『勿論です!増長さんの夢を実現する為に』
あっ......これはだめ。
書き途中だった文字、慌てて紙を丸めた。
『やっぱり、知ってるんだね?』
このことを知っているのは、私の他には北門さんだけだと思う。
『みょうじさんと俺はどういう関係だったの?』
『ただのA&Rと担当アイドルです』
『でも、MooNsのメンバーにも話してないことをみょうじさんは知ってる』
『違うんです!偶然、北門さんと話しているところに居合わせてしまって』
これは、本当のことだよね?
『何か知ってるなら教えてほしいんだ。俺は本当に自分の不注意でこんなことになったの?』
彼はとても切ない顔をしていた。
自分のことならきっと知りたい。
でも、聞かれたことはどれも話せないことばかりだ。
何か話せることはないかな?
考えていると増長さんが突然うずくまる。