【B-PROJECT】あなたの瞳に永遠を誓います......
第64章 理想と現実
呼吸が......おかしい?
「......っ、はっ......ひゅっ......」
過呼吸......?
『失声症には過呼吸が伴う』って......慌ててナースコールを押した。
誰か助けて!
焦る気持ちに反して返答はない。
彼を失うわけにはいかない!
「ごめんなさい......」
勢い任せでその唇に近づいた。
無知なままで、呼吸の指導なんて出来ない。
そんなことをすれば、彼の命を危険に晒すだろう。
すぐに息を送り込む。
しばらくそうしていると呼吸は落ち着いたみたいだ。
優しくその背中をさすったけど、彼の身体は私にもたれかかっている。
呼吸が少し落ち着いたのを確認して、ナースコールをもう一度押した。
「無事で良かったです......もうすぐ看護師さんが来てくれると思うので」
彼の気持ちは無視でキスしてしまったけど......いや、あれはキスじゃない。
ただ助けただけたから、笑顔でお礼をいってくれるって......そう思ってた。
綺麗な唇が紡いだのは全く別の言葉だったーー。
『簡単に誰とでもキス出来るんだね』
一瞬何を言われたのか分からなくてその表情を見るけど、直感的に読み間違えてないと思った。
読めない表情、彼らと私の様子を見れば無理もない。
「......ごめんなさい」
あの時は、何に対して謝ったんだろう。
キスしたことにはそうだけど、もっと別のことに謝ったのかもしれない。
『側にいることーー』
その場を後にしてからも幻滅したみたいな、表情が頭から離れなかった。