【B-PROJECT】あなたの瞳に永遠を誓います......
第64章 理想と現実
『記憶が戻らなくてもいい』
確かにそう思ったけど北門さんとの件に関しては、彼の記憶が戻らないのは困るかもしれない。
分かり合えていた時間があったことを思い出して、北門さんのことを思うと辛いな......。
無意識にそちらを見つめていたようで、彼とばっちり目が合った。
「そういえば、一度会社に帰るんじゃなかった?」
「夜叉丸さんに連絡するって言ってたけど......」
竜持くんが続ける。
「あれ......携帯?」
「忘れたんじゃない?」
「えっと、お二人は先に降りててください......すぐに追いかけますね」
慌ててきた道を引き返した。
ノックをすると、すぐに扉が開く。
「度々、すみません!私、携帯を......」
彼はすぐにそれを手渡してくれた。
「ありがとうございます!良かった。えっ......連絡?」
『見る気はなかったんだけど、ごめん』
ジェスチャーだけど、ちゃんと伝わる。
「いえいえ、元後いえば私が忘れたので......」
連絡は明謙くんからだった。
『終わったら教えてね』って本当に良い人だよね。今の私は、彼らの存在に前向きにしてもらってるんだ。
とんっと肩を叩かれてそちらに視線を向けると、綺麗な指で口元を拭われた。増長さんの指の感触を感じる度に顔が熱くなる。
きっと、何か......ついてたんだよね?
「ありがとう......ございます」
『どういたしまして 竜持が言ってた婚約者って誰?』
書かれた文字。驚くあまり、何を聞かれているのか一瞬分からなかった。
『それって倫毘沙?恋人同士ならこれくらいのキスは普通って言ってた』
どうやって説明したらいいのかな。あのキスはあの女性にカマをかける為だったんだよね?特に意味は無かったと思うんだけど。
『否定しないの?』
婚約者の選択肢は広い方がいい。外部の人も考えられるけど、少なくともメンバー全員にその可能性がある方がばれることはないだろう。とにかく、ボロが出ないように早く帰らないと!
「ごめんなさい!お二人を待たせてるので、失礼します!!」
そのまま逃げるみたいに病室を後にした。