【B-PROJECT】あなたの瞳に永遠を誓います......
第63章 まっすぐな恋心
「あの、私が婚約者だと知っているんですよね?」
名前を出したってことは、そうだよね?
「そうそう。和南から会わせたい人がいると聞いてて......」
「こんな形で顔を合わすことになってしまって......大切な息子さんに怪我をさせてしまい、本当に申し訳ありません!!お願いしたいことがあるのですが、私が婚約者だったということは、彼に黙っていてください。お願いします!」
そのまま、深く頭を下げた。
慌てて出てきた理由はこれだ。
彼に私が婚約者だと知られたら困る。
あの場でお父さんが言わないでくれて、本当に良かった。
「顔を上げてくれ。どうしてなのか理由を聞かせてくれないかな?声を失くして記憶を失くしたことが原因なのか?」
その表情は怒っているように見えた。
そうだよね。
取り方次第では、それが原因で愛想を尽かしたみたいだ。
でも......そちらを見つめると綺麗な瞳と目が合った。
その色は私がよく知ってる色だ。
「彼は優しいから、私が婚約者だったと知れば絶対に気にします。最悪、私のことを好きでもないのに責任を取ろうとするかもしれません!」
あの日、北門さんに......彼らにお願いしたのもこのことだった。
「彼の声は絶対に取り戻します。アイドルの仕事への復帰も必ず実現させます。彼に余計な心配をかけたくないんです!お願いします!」
そのまま深々と頭を下げた。
「その言い方だと、記憶は戻らなくてもいい。後回しみたいに聞こえるけど......」
頭上で聞こえた声はとても優しい声だ。
その声に思わず頭を上げる。
みたいじゃなくて、そうなんだ。
「記憶も大切な彼の一部なので、出来ることなら戻ればいいですけど......それが無くても別に増長さんは増長さんなので、いいんじゃないでしょうか?別に幼少に戻っているわけでもないので」
首を傾げると、お父さんは吹き出した。
「へっ......?」
「ははっ、変わった子だね。自分との思い出を簡単に......」
うんうんと深く頷くお父さん。
「みょうじさん自身も辛いのに、息子を大切に思ってくれてありがとう......」
こちらを見つめる瞳は、彼に似たとても優しい目だった。